Q.物件が知らない人に又貸し・転貸されているようです。どうすればよいですか?

A.占有者を特定し、明渡請求等を検討します。
 明渡相当と認められる場合、任意交渉や訴訟提起により明渡を実現します。

1.「転貸」の意味

(1) 無断転貸の法的な意味

 賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の承諾なく賃借物を転貸することはできません(民法612条)。賃借人が賃貸人の承諾なく賃借物を転貸した場合、賃貸人は契約を解除することができます(民法612条2項)。

(2) そもそも「転貸」とは何か?

 問題は「転貸」とは何か、ということです。
 「転貸」とは、賃借物の全部または一部の占有を第三者に移転すること、です。
 例えば、
 ①住居の賃借人が引っ越しをして、部屋を友人に貸して賃料をもらっていた
 ②テナントの賃借人が、その一部を別の会社に又貸しして賃料をもらっていた
 といった場合です。
 逆に、
 ③賃借人の婚約者が同居するようになった
 ④テナントの賃借人に新しい従業員が入り、
  その従業員が主体となってテナント内で別事業を行うようになった
 以上のような場合には賃借人の占有が移転するわけではありませんので、転貸には該当しません。
 (なお、賃貸借契約の別の条項に抵触する場合はあり得ます。)
 なお、注意したいのは、全部だけではなく一部を転貸した場合にも、民法が禁止する「転貸」に該当するということです。また、「共同使用」と主張した場合も同様に「転貸」と判断される場合があります。
  

(3) 転貸が禁止されている理由

 転貸が禁止され、転貸が(無催告解除事由)とされているのはなぜでしょうか。
 これは、賃貸借契約が継続的な契約であり、賃貸人と賃借人の信頼関係を基礎とする契約だからです。
 平たくいえば、賃貸人は、賃借人の信用状態や人柄、職業等のいわゆる属性を考慮したうえで賃借物を貸しています。このような賃借人の信用状態等を前提とし、信頼して賃貸している以上、第三者に対する転貸は賃貸人に対する裏切り行為です。そこで、民法上無断転貸が禁止され、無断転貸は解除事由とされているということです。
  

2.無断転貸であると疑われる場合の占有者の特定

(1) 占有者を客観的証拠で特定することの重要性

 無断転貸が疑われる場合には、まずは賃借物の占有者を特定することが重要です。占有者が賃借人以外であることが、客観的な証拠により明らかになるのであれば、それ自体で転貸であることが一応推定されるためです。
 ここで重要なのは、賃借人本人の申告だけではなく、客観的な証拠により確定させるということです。賃借人自身転貸であるとの認識が無い場合も少なくありません。
 では、どのように占有者を特定すればよいでしょうか。

(2) テナント・事務所の場合の占有者の特定方法

 テナントや事務所の場合には、営業の外観や事業所や店舗のホームページ等から占有者が特定できることがあります。また、無断で第三者が経営する会社登記がなされているような場合には、登記簿を取得することで占有者が明らかになることがあります。実際に訪問してみるというのも重要です。訪問により占有者が確認できることもあります。
 また、弁護士会照会等の方法により電気ガス水道の名義人を確認することで占有者を確認できる場合があります。

(3) 住居の場合の占有者の特定方法

 住居の場合に、郵便受けの中の郵便物の確認(見える範囲での確認です)や、物件を訪問することにより確認できることがあります。
 また、賃借人又は居住者の住所登録の有無、電気ガス水道の名義人の確認等を行うという方法により転貸の事実を確認できる場合があります。
 アパートや一棟マンションのオーナー様であれば、他の部屋の方に確認するという方法もあります。

(4) 占有者が特定できない場合

 占有者がどうしても分からない場合には、占有移転禁止の仮処分により、占有者を特定する方法があります。
 占有移転禁止の仮処分とは、物件占有者に対し、物件の占有を第三者に移転することを禁止する裁判所による保全手続です。この仮処分が発令されると、占有を第三者に移転することが禁止されます。仮に第三者に対して占有が移転された場合であっても、移転先の第三者に対する明渡の強制執行ができる場合があります。
 この占有移転禁止の仮処分の申立は、「占有者が特定できる」という機能があります。
 転貸であることが明らかであるが誰か分からないという場合、家賃滞納がある場合には、この占有移転禁止の仮処分を用いて占有者を特定できる場合があります。

3.占有者を特定した後の対応

 占有者を特定し、転貸の事実を確認した後は、明渡を求めることになります。
 物件の明渡を求める場合、賃借人と占有者双方に対して明け渡しを求めることになります。
 おおまかな手順としては
 ①転貸を理由とする賃貸借契約解除の意思表示
 ②解除の意思表示後も明渡が無い場合に訴訟提起
 ③明渡を命じる判決が出された後も明渡が無い場合には強制執行
 以上の手順となります。

4.最後に

 赤坂門法律事務所では、占有者が不明の場合の明渡請求についても解決実績があります。お困りの方はまずはご相談ください。
  
 【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】転貸事例につき約1か月半で明渡に至った事例(解決事例)

 【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】外国人の無断転貸において占有者を特定して明け渡しに至った事例(解決事例)

2022年11月16日更新

記事カテゴリ: 良くあるご質問
投稿日時: (約6年10ヶ月前)

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よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

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