【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】保証会社による保証が転貸を理由として終了した後速やかに明渡が実現した事例
事案の概要
物件:千葉県内の賃貸アパート
契約者:法人
家賃滞納:3か月
特徴:法人名義で契約し、従業員でもない第三者に又貸し
受任から解決まで:1か月半
1.家賃保証が付された物件での又貸し
物件は千葉県内の賃貸アパートです。
賃貸借契約には、保証会社の家賃保証がついていました。
契約者は法人です。社宅契約で従前その従業員が住んでいました。しかし、その従業員がオーナーに無断でその知人に又貸しし、ご相談時には、法人とは無関係の第三者(法人従業員の知人)が居住していました。
2.転貸の発覚
物件の家賃が滞納となったため、保証会社が回収のために物件を訪問したところ、無関係の第三者が居住していることが発覚しました。
保証会社との保証委託契約においては、第三者に対する転貸が発覚した場合には、保証終了となり、以後家賃保証が行われない旨明記されています。保証会社は、家賃保証の定めに基づき、保証契約が終了した旨通知し、以降の賃料について家賃保証がストップしてしまいました。
この段階で、当事務所に、実際の占有者に対する明渡請求の依頼がありました。
3.転貸を理由とする契約解除の意思表示と訴訟提起
まず、当職から、法人に対し、家賃滞納及び無断転貸を理由として、賃貸借契約を解除する旨の通知書を内容証明郵便で送付しました。内容証明郵便の到着を待って、契約者である法人と占有者に対して、物件の明渡を求める訴訟を提起しました。
4.占有者による物件の明渡及び賃料の回収
訴訟を提起してから約3週間後、裁判所から明渡請求の訴状送達を受けた占有者から当事務所に連絡が入り、「物件は速やかに明け渡す」旨の連絡が入りました。約1週間後に占有者から物件を明渡を受けるに至りました。
また、滞納賃料については契約者が法人であることから、法人に対して支払を請求しました。
5.保証終了となった転貸事案における明渡請求訴訟の相手方
保証終了となった転貸事案において、明渡請求の相手方は契約者及び実際の占有者です。契約者に対する明渡請求訴訟だけでは不十分です。占有者に対する訴訟提起が必要です。これは、契約者に対する判決(債務名義)だけでは、占有者に対する明渡の強制執行を実現することができないためです。
6.転貸した占有者が不明の場合でも仮処分手続を行うことで対応できます
転貸先の占有者が不明の場合には、占有移転禁止の仮処分の手続きをとることにより、物件の占有者を特定します。仮処分手続において占有の認定がされるためです。
占有移転禁止の仮処分により、占有者が手続上固定されることになります。仮処分手続にて認定された占有者に対する債務名義があれば、強制執行時に別の第三者が占有していたとしても、仮処分手続において認定された第三者に対する債務名義で、別の第三者に対して強制執行手続を行うことができます。
7.おわりに
転貸を理由として保証会社の保証終了となった場合には、以後家賃保証がなされないわけですから、速やかにかつ確実に手続を進める必要があります。しかし、転貸となった場合に、実際の占有者を認定するのは困難を伴うことも多いのが実情です。このような場合には是非弁護士に相談されることをお勧めします。