【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】転貸事例につき約1か月半で明渡に至った事例
【物 件】千葉県内の一軒家
【賃 借 人】高齢の女性
【占 有 者】内縁の夫と称する者及びその子と孫
【特 徴】賃借人は別に
【解決内容】内容証明郵便送付後1か月半で退去
1.賃貸物件にいつの間にか子供が住んでいる?
物件は千葉県内の小さな一軒家です。賃借人は高齢の女性で、内縁の夫(婚約者)が同居者になるものとされていました。なお、賃貸借契約書には「同居人変更の場合には家主の許可が必要」との文言がありました。
なお、賃貸借契約開始から1年経過したころ、物件から複数名の子供の声が聞こえるようになりました。また、夫とは年の離れた女性の姿も見受けられるようになりました。大家様が賃借人(妻)に電話で事情を質したところ、「夫の孫が家に遊びに来て、面倒を見ている。遊びに来ているだけなので、数週間で出ていくと思う」とのことでした。
しかし、それから数カ月経過しても、女性や子供が物件から退去する様子はなく、しまいには、学校の制服を着て出入りするようになりました。明らかに子供が居住していましたが、賃借人は「もう少ししたら出ていく」というばかりで、さらに2カ月が経過しました。
対応に困った大家様から赤坂門法律事務所にご相談を頂きました。お伺いした内容ですと、状況が明らかではありませんので、まずは物件に住民票を置いているのが誰か、確認することにしました。
2.占有者の調査
住民票調査を行ったところ、賃借人である妻の住民票は物件で該当がありませんでした。賃借人は、物件ではなく、別の場所に住民票を置き、そこで生活していることが分かりました。
賃借人ではない夫は、物件に住民票を置いていました。加えて、夫の娘と孫の住民票が、最近になって物件に移転されていることが判明しました。
つまり、賃借人である妻は別の場所に住んでおり、夫がその娘と孫と一緒に居住し物件を使用占有しているということが判明しました。
3.賃借人と占有者に対する明渡請求
(1)大家様に、夫の家族が物件を占有使用している様子である旨を報告しました。すると、契約時との話が違うので、賃貸借契約を解除し夫の家族には物件から退去してもらいたいとの意向を示されました。
そこで、赤坂門法律事務所にて明渡請求を受任し、手続を進めることになりました。
(2)まずは、賃借人に対して、無断転貸を理由とする契約解除通知書を送付しました。
解除通知書到達後すぐに賃借人から電話連絡があり、夫の子と孫が住んでいるだけだから契約解除は認められない、家賃は支払っているのだから別に良いではないか、といった内容の主張が展開されました。当方からは、①物件の占有主体が夫とその家族になっており、転貸となっている、②娘と孫については居住を認めたこともない、③賃料滞納が無くても、転貸があれば契約解除を認めるのが民法の考え方、等と反論するなどして退去するよう説得を試みました。
しかしながら、賃借人はあくまでも居住継続を主張してきましたので、やむなく、管轄の地方裁判所に、賃借人及びその夫、子を被告とする建物明渡請求訴訟を提起しました。
(3)訴訟提起後、賃借人には訴訟提起した旨と伝え、引き続き明渡交渉を継続しました。
しばらくして賃借人から連絡があり、「退去することにした」との連絡がありました。
連絡から1か月程度間を空け、本件建物の明渡しがされました。訴訟についても速やかに取下げ、解決に至りました。
4.本件のポイント
本件は、転貸を理由に賃貸借契約を解除し、首尾よく早期に明渡が実現した事例です。
転貸か否かについては、「物件を事実上占有する主体が誰か」によって決定されます。同居者として記載があっても、賃借人が別の場所に住んでおり、物件を同居者のみが占有している場合には、賃借人が同居者に物件を「転貸」していると評価されることがあります。
今回の場合には、同居者が単独で居住するだけではなく、その子や孫も居住していることが発覚したことから、賃貸借契約を解除し明渡請求に至ったものです。
このように、賃貸借契約において同居者として記載がされていても、賃借人が物件に居住していない場合には明渡請求権が認められることがあります。
物件の居住者に疑義がある場合、占有者の調査のみを行うこともできますので、お悩みの方は是非ご相談頂ければと思います。