【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】賃借人から賃料減額を主張されたものの建物明渡に至った事例
【物件】首都圏郊外の一軒家
【賃借人】60代男性
【特徴】賃料減額を主張され家賃支払拒否
【解決内容】明渡断行
1.賃料の減額を主張する賃借人
 物件は首都圏郊外の一軒家で、賃借人は60代男性です。
 物件は築40年程度の一軒家でした。老朽化が進んでいるものの、居住には問題ありませんでした。老朽化しているため、入居時に設備の不具合が発見されることがありましたが、オーナー及び管理会社はその都度誠実に対応していました。
 賃借人は、その後物件が古いとして賃料の減額を一方的に主張して、かつ、賃料を一切支払わなくなりました。
 3か月滞納が生じた時点でオーナー様より相談があり、建物明渡請求訴訟のご依頼を受けました。
2.建物明渡請求訴訟における賃借人の主張
 賃借人からは、建物明渡請求訴訟において、
  ①物件が古く、家賃が減額されてしかるべき
  ②管理会社から監視されている
  ③家賃保証会社の担当者から勝手にドアを開けられた
 などという主張がされました。
 これらの賃借人の主張に対して、当方が反論したところ、賃借人からの再反論はなく、裁判期日にも出廷しなくなったことから、賃借人に対して明け渡しを命じる判決が下されました。
 賃借人側から控訴されましたが、第一審判決に仮執行宣言が付されていた関係で、控訴審の第1回期日が開かれる前に強制執行手続(明渡断行)により明渡が実現しました。控訴審に賃借人が出席することはなく、そのまま事件としては終了しました。
3.賃料減額を主張する賃借人に対する対応
(1) 賃借人の中には、(恐らく賃料が支払えないものと思われますが)、物件が古い、物件が破損しているといって一方的に賃料の減額を主張してくる方がいます。賃料の減額を主張して減額分のみを支払ってくる方もいますが、賃料の減額を主張し、減額の合意ができるまで一切支払わないという方もいます。
(2) この点、民法611条1項 は、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」において、「それが賃借人の責めに帰すべき事由によらない場合」には、賃料がその使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額されるとされています。これは、賃料が当然に減額されることを定めたものであり、減額分について支払義務は発生しないものとされています。他方で、減額分以外の部分については依然として支払義務が存在しますので、賃借物の使用ができるのであえば、その使用可能部分に応じた賃料を支払わなければなりません。
 「使用及び収益をすることができなくなったとき」とは、例えば賃借物の設備の一部が何らかの理由で破損した場合や火事により焼失した場合、などが考えられます。単に「老朽化しているので家賃をもっと下げるべき」「周辺の相場から高い」というだけでは当然に減額されることはありません。また、当然に減額されない結果、賃料減額請求(借地借家法32条1項)を行った場合でも、その裁判が確定するまでは、借主が相当と認める額の賃料を支払う義務があります(借地借家法32条3項)。
 よって、仮に賃借人が、老朽化や周辺相場を理由に賃料の減額を主張してきたとしても、賃借人が当然に支払義務を免れるわけではありません。
(3) 賃料減額を主張する賃借人に対する対応
 賃料減額に対する賃借人に対しては、その主張を崩す法的な主張や事実関係の立証を行う必要があります。賃料減額に関しては、令和2年4月施行の民法で規定が新設された部分もあります。
 このような賃借人に対する対応につきましては、是非赤坂門法律事務所にご相談ください。