Q.いわゆる正当事由はどのように判断されるのでしょうか
A.賃貸人・賃借人の使用の必要性や立退料等を考慮して決定されます
借主に契約違反行為や落ち度等が無い場合には、借主に対し、老朽化や建て替え、自己使用を理由として、改めて立ち退きを求めていくことになります。
退去に難色を示された場合や、応答が無い場合など、交渉に時間がかかりそうな借主については、普通賃貸借契約の更新拒絶通知(借地借家法26条1項)、又は、解約申入れ(借地借家法27条1項)により、賃貸借契約の解約を求めていくことになります。
ただし、無条件に解約申入れが認められるわけではありません。解約申入れが認められるためには、正当事由(借地借家法28条)が必要です。
(イメージ図)
正当事由の判断においては、家主様が建物の使用を必要とする事情と借主が建物の使用を必要とする事情が基本的な判断要素とされます。
「建物の賃貸借に関する従前の経過」「建物の利用状況や建物の現況」「立退料」は付随的な判断要素とされています。
したがって、「立退料」の存在のみで正当事由が判断されるわけではありません。
家主使用の必要性があるという事情は、建物明渡しを求める場合における重要な事情です。
老齢の家主が家族と同居するために貸家の返還を求める場合
家主の家族が居住する必要がある場合
転勤にあたって家主が通勤に便利な建物を自ら使用する必要に迫られている場合
このような事情は、家主使用の必要性を基礎づける重要な事情です。
建替え、再開発の必要があること
建物を取り壊すことにより安全性を確保すべき場合
不動産を有効利用して収益を上げるために建て替える場合
老朽化による大規模修繕にかなりの費用が必要となる場合
にも正当事由が認められる場合があります。
また、その建物での居住を必要とする借主の事情も正当事由の判断要素となります。
立退料算定の際には、借主に立退きするのに困難な事情がないかも考慮されます。
営業用テナントなどの場合には、正当事由が認められるにしても、営業上の利益や移転費用の補償も含まれ、立退料が高額になる傾向にあります。
上記のような事情を総合的に見て、正当事由が存在するか、または、立退料がいくらになるか決定されることになります。