【建物明け渡し(立ち退き)解決事例】 借主である法人代表者が日本から出国していることが判明した場合に、外国における公示送達の手続きを用いて送達を完了させた事例

【物件】首都圏郊外の賃貸アパート
【借主】法人
【滞納月数】6か月 月額5万円前後
【特徴】借主代表者が行方不明となり、その後、日本国外に出国していたことが判明

1.依頼に至った経緯

 物件は首都圏郊外の賃貸アパートです。借主はこの賃貸アパートを社宅として利用していました。しかし、家賃の滞納が始まり、管理会社が物件を訪問したところ、出入りが無いことが判明しました。連絡もとれないことから、当事務所(赤坂門法律事務所)に明け渡し(立ち退き)請求訴訟の依頼がありました。
  

2.経過

(1) 任意交渉の試み

 まず、契約解除の意思表示をする内容証明郵便を、法人の登記簿上の住所である物件住所と借主代表者の住民票地に送付しましたが、いずれも宛所尋ね無しとして返送されてきました。
 既に使用されている形跡がないことから、任意での明渡を求めるため、借主の代表者の携帯電話に電話をかけてみました。しかしながら、携帯電話番号は既に利用されておらず、電話による連絡がとれない状況でした。賃貸借契約書上の連帯保証人に電話しましたが、これも繋がらず、また、賃貸借契約書に記載された緊急連絡先にも電話してみましたが、その方も、「現在どこにいるか分からない。自分も探しているのですが。。。」とのことでした。
 借主の代表者の所在が不明であることから、借主代表者の日本国内における住民票を取得してみました。すると、借主代表者は既に日本から出国していることが判明しました。また、弁護士会照会により入出国履歴を照会したところ、その後日本国内に入国していないことも判明しました。出国先住所についても把握できました。
 以上のとおり、任意の明け渡し、立ち退きは期待できないことが判明しました。

(2) 訴訟提起から訴状の送達まで

 任意の明け渡しが期待できない以上、このまま待っていても意味がありませんので、速やかに訴訟提起を行いました。
 訴訟提起後、訴状や証拠(書証)等は、物件住所と原告代表者の日本国内における住民票地に送付してもらいましたが、宛所尋ね無しで返送されてきました。
 本件では、日本出国後の住所が判明していましたので、次に検討すべきは、原告代表者の外国における住所地への送達です。この点、外国送達は半年~1年程度時間がかかりますので、出来れば避けたいところでした。
 そこで、私は、一旦、外国の住所にEMS(国際スピード郵便)にて契約解除を求める郵便を送付してみました。これは、仮に、EMSが返送されてきた場合には、その住所に借主代表者がいないことになり、公示送達となるためです。
 EMSを送付してみたところ、EMSは宛所尋ね無しとして返送されてきました。その郵便の写しを裁判所に提出し、外国における公示送達の申立てを行いました。

(3) 期日から執行まで

 訴状を公示送達としたのち、裁判期日が開かれ、借主に対して明け渡しを命じる判決を受領しました。
 明渡後速やかに強制執行手続を行い、通常と同じ流れにて、物件の明け渡し(立ち退き)を実現することができました。

3.弁護士コメント

 本件は、法人借主の代表者が既に日本国内から出国していることが判明したという少し特殊な事案です。
 明け渡し訴訟を提起したのち、裁判手続を進めるためには、訴状や証拠(書証)が借主に送達されることが必要です。この点、借主の所在が不明である場合、法人代表者が既に日本から出国しており、日本国外の住所がある程度判明している場合には、外国送達という手続きが必要となります。
 このような外国送達が必要となった場合にも、すぐに外国送達とはせず、一旦EMS(国際スピード郵便)等で郵便を送付し、そこに居住していることを確かめてから、外国送達を行うことが通常です。
 本件はEMSが宛所尋ね無しとして返送されてきたことで、外国の住所に居住していないことが明らかとなったことから、公示送達にて送達手続きを完了することができました。
 このように、日本人・外国人問わず、既に日本から出国していることが明らかな場合であっても、通常と同様のスピード間で明け渡し・立ち退きを実現することができます。但し、弁護士会照会などの手続きをとる場合がありますので、弁護士に依頼したほうが確実に明け渡しを実現する場合がありますので、遠慮なくご相談ください。

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記事カテゴリ: 解決事例
投稿日時: (約2年3ヶ月前)
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