【建物賃貸借契約条項解説】7 敷金一般

1.はじめに

敷金とは、賃貸借契約に基づく金銭債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に預託される金員のことです。なお、改正民法第622条の2においては、敷金を、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されています。
住居用賃貸借契約では、契約時に1か月~数か月分の敷金を預託することが一般的かと思われます。

2.敷金の返還時期

敷金は、賃貸借の終了後家屋明渡義務の履行までに生ずる、賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものです。したがって、賃貸人は、賃貸借の終了後家屋の明渡がされた時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除してなお残額がある場合に、その残額につき返還義務を負担します( 最判昭48.2.2民集27-1-80)。
したがって、契約終了に伴う建物明渡義務と同時履行の関係に立ちません( 最判昭49.9.2民集28-6-1152)。そして、敷金の返還が無いからと言って、建物の明渡しを拒否することも原則としてできません。

3.敷金の充当

賃貸人は、敷金を債務に充当することができます。逆に、賃借人が、敷金を未払債務に充当することを求めることはできません(改正民法622条の2第2項)。
敷金を債務に充当した場合、賃貸人は不足した敷金を賃借人に対してその預託を求めることができる旨(又は、当然に賃借人に充当義務が発生する旨)、規定されることがほとんどだと思われます。逆に、不足分の預託を求めることができる旨の規定がない場合には、原則として追加の敷金の充当を求めることはできないと考えられます。その意味で、充当義務又は充当を求めることができる旨の規定は必須です。

次のページ: 8.敷金返還債務の承継

目次:建物賃貸借契約条項解説

  1. 賃貸借の目的物
  2. 契約期間・更新条項
  3. 使用目的
  4. 更新料
  5. 賃料等の支払時期・支払方法
  6. 賃料改定・賃料増減請求
  7. 敷金一般(本ページ)
  8. 敷金返還債務の承継
  9. 館内規則・利用規約等
  10. 遅延損害金
  11. 賃貸人の修繕義務
  12. 契約の解除・信頼関係破壊の法理
  13. 保証金
  14. 賃借人たる地位の移転
  15. 原状変更の原則禁止
  16. 善管注意義務及び損害賠償
  17. 連帯保証人
  18. 反社会的勢力の排除
  19. 当事者双方からの期間内解約条項
投稿日時: (約6年1ヶ月前)

アクセス

関連サイト・サービス内容

 

所有者不明土地(名義人不明問題)

不動産に関する各種契約書を、迅速かつ適切な形で作成します。証券化に関する契約書や不動産信託に関する契約書、財務局への届出書類などについても対応します。

 

共有不動産問題

共有不動産問題は、先送りにすると問題解決を困難にしますので、早期の弁護士相談が有効です。一緒に解決策を考えていきましょう。

 

破産・再生・債務整理

不動産の処理が問題になる法人・個人破産手続、民事再生手続や債務整理手続についても、多数の案件を取り扱ってきました。経験を生かして適切な処理を行います。

M&A関連業務

M&Aと企業再編の成功に向け、不動産問題を多数取り扱った経験を踏まえて最善の努力を尽くします。

法人顧問(不動産会社向け)

多数の不動産問題を取り扱った経験やアドバイスを行った経験を踏まえ、企業活動に適切な指針を与えます。また、不動産Techに関する法的課題について適切にアドバイスします。

不動産証券化

一社)不動産証券化協会認定マスターを取得しています。不動産証券化業務に関する契約書レビュー、取得物件デューデリジェンスや各種法的アドバイスを行います。

不動産Techに関する
法的問題

不動産Techに関しては、様々な法的課題があります。未知の課題に関しても、これまでの経験を踏まえてアドバイスしま

各種契約書等の作成

不動産に関する各種契約書を、迅速かつ適切な形で作成します。証券化に関する契約書や不動産信託に関する契約書、財務局への届出書類などについても対応します。

よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

よくある質問をもっと見る

お問い合わせ

  • 東京事務所
  • 03-6550-8835
  • 受付時間:平日10時〜17時
  • 福岡事務所
  • 092-717-8220
  • 受付時間:平日10時〜17時

メールでのお問い合わせはこちら

© AKM弁護士法人 赤坂門法律事務所

赤坂門法律事務所 不動産専門チームが、不動産オーナー、
大家さんや管理会社様のお悩みを解決します。
お困りの方はすぐにご連絡ください。