【家賃滞納・建物明渡専門弁護士による契約条項解説】18 反社会的勢力の排除
【賃貸借契約の条項例】
第〇条(反社会的勢力の排除)
- 賃借人は、賃貸人に対し、次の各号の事項を確約する。
- 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
- 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
- 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
- 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
- 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
- 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
- 賃借人は、賃貸人の承諾の有無にかかわらず、本物件の全部又は一部につき、反社会的勢力に賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
- 賃借人は次の各号の行為を行ってはならない。
- 本物件を反社会的勢力の事務所その他活動の拠点に供すること
- 本物件又は本物件の周辺において、著しく粗野若しくは乱暴な言動を行い、又は威勢を示すことにより、付近の住民又は通行人に不安を覚えさせること
- 本物件に反社会的勢力を居住させ、又は反社会的勢力を出入りさせること
- 賃借人が次のいずれかに該当した場合には、賃貸人は、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。
- 本条第1項各号の確約に反する事実が判明した場合
- 契約締結後に自ら又は役員が反社会的勢力に該当した場合
- 賃借人が本条第2項又は第3項に定める行為を行った場合
【賃貸借契約条項の解説】
1 趣旨
賃貸借契約では反社会的勢力排除を定めることが一般的です。暴力団排除の気運が高まり、全国各地で暴力団排除条例の制定されたことに伴い定められるようになったものです。各地の暴力団排除条例は、契約締結の際に賃借人が暴力団関係者でないことを確認することを義務付けたり、暴力団関係者が反社会的勢力であることが判明した場合には契約解除をするように義務付けておりますので、その点も踏まえて条項案を検討する必要があります。
2 条項の内容
第1項は、賃借人が賃貸人に対し、反社会的勢力でないことを誓約する旨の定めです。なお、賃貸借契約においては、別に反社会勢力に該当しない旨の誓約書面を取得することが一般的です。
第2項及び第3項は、反社会的勢力排除に関連して、賃借人に対する禁止行為を定めたものです。
重要なのは第4条の解除条項です。本条に定める禁止行為に該当する場合には、無催告で契約を解除することができる旨の条項です。
3 賃借人が禁止行為に該当した場合
賃借人が禁止行為を行ったことが判明した場合には、速やかに契約を解除して、物件の明け渡しを求めることができます。賃借人が逮捕された際に報道や警察からの問い合わせで反社会的勢力であることが判明した場合が典型です。逮捕された場合には、同時に家賃滞納が生じることも多く、早めの弁護士相談が必要です。
4 裁判で条項違反を主張する場合の注意点
裁判所における明渡訴訟において本条の条項違反を主張する場合には、客観的な証拠を裁判所に提出する必要があります。ここで明らかな証拠が提出できないときは、明渡請求が棄却されて後々無用なトラブルを招くこともありますので注意が必要です。裁判の前に、内容証明郵便を送付するなどして交渉を先行させることも検討すべきです(実際にはすぐ任意で退去していくことも多いです)。場合によっては、警察のなどの公的機関の助力も得るべきでしょう。
目次:建物賃貸借契約条項解説
- 賃貸借の目的物
- 契約期間・更新条項
- 使用目的
- 更新料
- 賃料等の支払時期・支払方法
- 賃料改定・賃料増減請求
- 敷金一般
- 敷金返還債務の承継
- 館内規則・利用規約等
- 遅延損害金
- 賃貸人の修繕義務
- 契約の解除・信頼関係破壊の法理
- 保証金
- 賃借人たる地位の移転
- 原状変更の原則禁止
- 善管注意義務及び損害賠償
- 連帯保証人
- 反社会的勢力の排除(本ページ)
- 当事者双方からの期間内解約条項