【建物賃貸借契約条項解説】 11 賃貸人の修繕義務
1 賃貸人の修繕義務・修繕権
⑴ 賃貸人は、賃貸目的物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負います(改正民法606条1項本文)。もっとも、賃借人の責めに帰すべき事由によって賃貸目的物の修繕が必要になったときは、賃貸人は修繕義務を負いません(同606条1項但書)。
⑵ 他方、賃貸目的物の保存に必要な修繕をすることは賃貸人の権利でもあるので(同606条2項参照)、賃貸目的物の棄損が放置されることによって賃貸目的物の価値が損なわれると判断される場合には、賃貸人は自ら修繕をすることができ、賃借人はこれを拒むことができません。
2 賃借人が修繕費用を負担する旨の具体的規定
⑴ 賃借人所有の造作設備に対する維持・管理・修繕費用
賃借人は、賃貸目的物の使用収益に際し、賃貸人の同意を得て造作設備を建物に付加する場合があります。このような場合に、賃貸人が同意したからといって当該造作設備の維持・管理・修繕の義務が当然に賃貸人に生じるわけではありません。賃貸借契約書ではこの旨を確認的に規定する場合がほとんどです。
⑵ 賃借人の使用による経年劣化に基づく床の張替え・照明器具の取り換え費用等
賃借人が賃貸目的物を使用すると、時間の経過とともにどうしても損耗していきます。そこで、こうした経年劣化に伴う損耗を回復する費用を賃借人の負担とする旨定めることができます。
⑶ 賃貸人が修繕義務を負わない旨の特約は可能か
上記民法の定めは任意規定に過ぎないので、特約によって賃貸人の修繕義務を排除することが可能です。もっとも、賃貸人が修繕義務を負わない旨を規定したからといって、当然に賃借人が修繕義務を負うことにはならないため注意が必要です。賃借人に修繕義務を負わせたい場合には、積極的に賃借人がいかなる費用について修繕費用を負担するかを明確に規定する必要があります。
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