【明渡請求訴訟事件の実務】9 請求権者(賃貸人・所有者)の特定(2)

(1) 請求権者を具体的に検討する必要性

 「7 明渡請求における当事者の検討 」にて、不動産明渡請求における請求権を有する人は、①賃貸人、又は、②所有権者(オーナー)と説明しました。
 ただ、ひとくちに「賃貸人」「所有者」といっても、誰が賃貸人か、誰が所有者なのか、悩む場合も少なくありません。
 前回は、「誰が賃貸人なのか」を検討しました。
 そこで、今回は、「誰が所有者といえるか」を検討します。

(2) 登記済不動産

 

ア 原則

 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物を使用し、収益し、処分する権利を有します(民法206条)。所有者とは物につきその所有権を有する者と言い換えることもできます。
 不動産の所有権は、登記にて公示されます。登記において現在の所有者として登録している者は、いわゆる登記の推定力により、当該不動産の所有者であると推定されます。具体的にいえば、不動産に関する履歴事項全部証明書に現在の所有者として記載されている者、が、所有者と推定されます。
 

イ 例外(反証)

 但し、登記簿に記載されている所有者であることは反証により覆すことができます。
 例えば、登記原因となった売買契約が無効であることや既に取り消されていること等を主張立証することで、所有者であることを否定することもできます。

(3) 未登記不動産について

 登記されていない未登記不動産については、いわゆる登記の推定力が働きません。
 この場合、不動産に関する建築確認申請を行ったことや固定資産税の課税証明書等によりその所有権を証明する必要があります。
 固定資産税は固定資産の所有者に課するものとされており(地方税法343条1項)、所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている者をいうものとされています。未登記建物について固定資産税の課税義務者として登録されている者が所有者であると認められることが多いものと考えられます。

(4) まとめ

 以上のとおり、不動産の所有権は原則として不動産登記簿に現在の所有者として記載された者に帰属するものと推定されます。
 なお、登記上において所有者であるとの記録がなされていても反証により覆されることがあること、未登記不動産の場合においては登記の推定力が及ばない結果、所有権の存在について主張立証を必要とする場合があることに注意が必要です。

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記事カテゴリ: コラム
投稿日時: (約4ヶ月前)
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