【明渡請求訴訟事件の実務】11 相手方との交渉

(1) 賃貸借契約を解除して賃借人に明け渡しを求める場合

ア 契約解除通知の発送

 賃貸借契約を解除し、賃借人に対して明け渡し請求を行う場合、弁護士が賃借人に対して契約解除通知を送付します。
 契約解除通知の内容は、大きく分けて、
① 催告解除(期限を定めて賃料支払等の履行を求め、期限内に履行が無かった場合に解除するもの)
② 無催告解除(期限を定めずに即時解除するもの)
 この2種類があります。
 契約解除の意思表示は内容証明郵便で送付するのが一般的です。契約解除の意思表示が到達した日、解除の意思表示の内容について記録を残すためです。
 なお、内容証明郵便が受け取られない場合に備えた措置として、同内容の通知書を特定記録郵便等で送付することもあります。但し、これはケースバイケースです。

イ 賃借人に対する連絡と交渉

 契約解除通知到達後、賃借人に対する連絡と明渡に関する交渉を行います。
 賃借人に対する電話連絡において、契約解除通知の内容を説明します。
 また、賃借人との間で退去時期に関する交渉を行います。賃借人が生活に困窮していると認められる場合などは、弁護士から行政機関(生活保護担当部署等)の案内をすることもあります。
 そもそも賃借人と電話連絡がつかない場合もあります。その際には物件の明渡を求める訴訟を提起することになります。

(2) 占有者に対して明渡を求める場合

ア 明渡を求める通知書送付

 物件を不法に占有されている場合等は、相手方に対し、まずは物件の明渡を求める文書を送付することが通例です。(その前提として、占有者が誰かを特定する必要があります。)
 内容としては、所有権・賃借権に基づく妨害排除請求権として物件の明渡を求める、という形になるのが通例です。

イ そのうえで、相手方との間で明渡の交渉を行うことになります。

 相手方に対しては、即時明渡を求めることになります。特に不法占拠の場合には、物件に予想不可能な損害を生じさせるためです。
 相手方と連絡が取れない場合には、相手方に対して物件の明渡を求める訴訟を提起します。そもそも不法占拠者の特定ができないという場合もあります。その場合には、占有移転禁止の仮処分等の手続を経ることで占有者を特定することができます。また、占有移転禁止の仮処分を経ていれば、その後占有者が変わっても強制執行に支障が無い状態にすることができます。

目次

記事カテゴリ: コラム
投稿日時: (約2年1ヶ月前)

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よくあるご質問

見積もりを取ることは可能でしょうか?

ご相談いただければ可能です。

ご相談内容を踏まえてお見積りさせていただきます。
見積もりは無料となっております。事案によって請求額は異なりますので、まずはご相談ください。

退去してもらうまで、どの程度の時間がかかるものでしょうか?

当事務所での解決までの平均期間は、4か月程度です。但し、弁護士が受任したことで、1カ月程度の早期解決に至ることもあります。

家賃滞納による明渡請求は、家賃滞納自体に争いが無い場合には、強制執行手続による退去完了まで、以下の経過をたどります。

  1. 内容証明郵便による契約解除通知送付(受任から3日~1週間程度)
  2. 訴訟提起(内容証明郵便送付日の翌日~2週間程度)
  3. 第1回期日(訴訟提起日から1ケ月~1ケ月半程度)
  4. 判決期日(第1回期日から1週間~2週間程度)
  5. 強制執行申立(判決期日から2週間~1ケ月程度)
  6. 断行手続(強制執行申立から1ケ月~1ケ月半程度)
  7. 退去完了

強制執行手続のうち、断行手続(裁判所の手続により、荷物を搬出・鍵の交換等を行う等の方法で強制的に明け渡しを実現する手続)によって退去が完了する場合、受任から終了まで概ね4ケ月~5ケ月程度の期間が必要となります。

但し、賃借人が行方不明の場合などを除き、強制執行の断行手続に至るケースは多くありません。訴訟提起後、強制執行手続に至るまでに退去するケースの方が圧倒的に多いというのが実情です。
弁護士が家主様の代理人に就任したことにより、1カ月程度で退去に至るケースもあります。
これらの早期解決案件を含めた弊事務所での平均解決期間は、受任から概ね4ケ月程度です。

【2022年10月11日更新】

司法書士に頼むのとどう違うのですか?

建物明渡請求訴訟について、司法書士は原則として代理人になれません。

弁護士と司法書士の違いは、端的にはその権限に違いがあります。

弁護士は、すべての訴訟事件について代理人として活動することができます。
他方で、司法書士は、訴訟事件について原則として代理人となる権限がありません。
認定を受ければ訴額140万円以下の事件について代理人として活動することはできます。しかし、その場合でも、簡易裁判所の事件での代理権しかなく、地方裁判所での代理権限はありません。
不動産明渡請求訴訟は地方裁判所が管轄です。司法書士は地方裁判所における代理権がありませんし、強制執行手続きについては、司法書士は代理人にはなれません。
不動産明渡請求については、司法書士が大家様や管理会社様に代わって借主と交渉することもできません。

借り主がどこに行ったか不明で連絡も取れないのですが、それでもお願い出来ますか?

可能です。法的手続きを進めるうえで大きな問題はありません。

借り主が所在不明で連絡も取れないということは、もはや話し合いでは解決できません。法的手続きを執るしか無い場合がほとんどだと思われます。
そのような場合に適した法的手続きを進めることで、ほとんどの場合、強制的に退去させることが出来ます。
但し、連絡も取れない場合には、家賃の回収については困難な場合がほとんどです。

手続き中、借主が直接自分の所に来て話したいと言ってきた場合にはどうしたらよい?

毅然と拒否し、弁護士と話すよう伝えて下さい。

弁護士が受任した場合は、全て弁護士を通していただく必要があります。大家さんご本人が直接話すとどうしても甘いことを言ってしまったりして、それを逆手に取られ、状況がこじれることがあるからです。
我々が借主様からお話を伺った場合には、通常依頼人たる大家様にご報告申し上げ、それで対応を協議するという形になります。
ご依頼頂いている以上、「弁護士を通してほしい」と言って頂いて構いませんので、まず直接の話し合いは避け、弁護士と話すように伝えてください。

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