【明渡請求訴訟事件の実務】2 明渡請求訴訟の特徴 (4)送達の問題

 民事訴訟においては、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達するという手続がとられます(特別送達)。これは、被告の裁判を受ける権利を保障するとともに(自らの知らないところで裁判が進行することを防ぐ)、被告の訴訟における防御権を保障し、反論の機会を与える(訴訟で主張する機会を与える)ためです。
 裁判所が行う特別送達は、原則として郵送で行われます。そして、送達のあて先は、被告の住所、居所、営業所、事務所に宛てに行うのが原則です。加えて、書留郵便にて送付されますので、裁判書類の配達時に被告などが不在で書類を渡すことができない場合には、不在通知がポストなどに投函され、書類一式を一定期間郵便局で保管することになります。
 一般的な民事訴訟では、訴状を含む書類一式を被告が問題なく受け取り、手続きが進んでいくことがほとんどです。
 しかし、家賃を滞納している賃借人の方は、裁判書類を自宅に送達しようとしても、裁判所からの書類を受け取らない傾向にあります。居留守を使うことが多いということと、裁判所などの公的機関から送付された書類に対する拒否反応等もあるように思われます。
 最初の郵送による特別送達が、被告が受け取らなかったことにより成功しなかった場合、送達ができないことになり、裁判手続きは進みません。被告の受け取り拒否により裁判手続が進まないとになれば、被告による訴訟の引き延ばしを許してしまうことになります。また、被告の所在がそもそも不明の場合には、送達ができないことにより裁判手続きが一向に進まないという不都合が生じます。
 そこで、民事訴訟法は、被告の就業場所に送達することを認める就業場所送達、被告の住所に書留に付する郵便として送付する付郵便送達、被告が所在不明の場合における公示送達など、さまざまな送達方法を定めています。これにより、被告に対する送達が実現することになります。
 しかしながら、これらの送達方法については、要件が定められているほか、特に公示送達の場合には、所在不明の事実を写真や報告書などにより明らかにしなければならないなど、その認定は厳密に行われます。また、どのような送達方法を行うか、非常に悩ましい場合も多々あります。書記官や裁判官と意見が異なることもありますので、どのようにスムーズに送達を進めるか、弁護士としても悩むことが多々あります。
 このように、明渡請求訴訟は、送達が比較的問題になりやすいという点がその特徴であるということができます。

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投稿日時: (約3年5ヶ月前)
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